ヒットのヒント「落ちたリンゴを売れ!」

(今回のお話は、話自体はご存知の方もいらっしゃるかとは思いますが、

問題としてはちょっとむずかしいかもしれません。)

アメリカ・ミネソタ州であった話、らしいです。

ある年、リンゴ畑に、数十年ぶりで大粒のヒョウ(雹)が降ってきました。

ピンポン玉くらいある、かなり大粒のヒョウです。 収穫を目前に控えたリンゴは、ひとたまりもありません。

次々と地面に叩き落とされてしまいました。

地面に点々と落ちたリンゴ。その表面もヒョウの痕がつき そこらじゅう真っ黒に変色しています。

リンゴ農家は大損害。途方にくれてしまいました。

しかし、リンゴ農家で働く20代の青年・ジョージは違いました。

彼は、「チャンスだ!」と考え、落ちたリンゴを山と積み、 その隣に自作の看板を立てたのです。

この看板の内容が、お客さんの購買欲に火をつけたのですが・・・

 

さあ、あなたがジョージだったら、看板にどんなキャッチフレーズを書きますか?

(すみません、やはりちょっとむずかしいですね)

でも、1分だけ、考えてみてください。   リンゴの山

 

 

(解答)

ジョージが書いた看板の文章は、このようなものでした。

 

「自然の恵みを受けたリンゴです!

このリンゴは、数十年ぶりのヒョウに打たれた珍しいものです!

おかげで甘みが増しました。

ヒョウに打たれた証拠は、表面の黒い斑点です。」

リンゴはあっという間に売り切れ むしろ、例年より売上を伸ばした、ということです。

(出典:箱田忠昭「落ちたリンゴを売れ!」フォレスト出版)

 

いかがでしたか?   「なるほど」とか「そんなバカな!」とか、いろいろな感想が、あると思います。

しかし、ジョージの着眼点は、細かく見ていくと学ぶべき点が多いのです。

少し長くなりますが、「ジョージがどうやってトラブルを成功に変えていったのか」について、分析してみましょう。

 

まず、ジョージ以外の普通の農家は、途方に暮れるか、リンゴを廃棄処分するしかないという

「マイナス思考」しか思い浮かびませんでした。

整理すると、以下のような理由があると思います。

1.お客は完全なリンゴだけを欲しがる。傷んだリンゴなんか欲しがらない。

2.だから、ヒョウに落とされたリンゴはもうそれだけで、売り物にならない。

3.表面も、ヒョウに当たって黒い斑点が出来ている。ごまかしようがない。

 

これに対しジョージは、全く同じ状況を「プラス」ととらえます。

1.何かが当たって黒ずんだリンゴは、甘味が増しているものだ。

(この「知識」が成功の最初のカギになりました。これについては、あとでもう少し詳しく述べます。)

2.甘味が増している、ということをきちんと伝えれば、 お客は、少々の見た目の悪さは、気にしないだろう。

3.それよりいっそ、ヒョウが当たった黒ずんだ部分を、甘さの証明としてセールスポイントにしよう。

4.さらに「ヒョウがまんべんなく当たって」というのは そう毎年あるものじゃない。希少価値がある。

 

こうして出来たジョージのキャッチフレーズには、

簡潔な文章ながら4つものセールスポイントが、たくみに組み込まれています。

1.「このリンゴは”自然の恵み”を受けています」

2.「”自然の恵み”とは、ヒョウに打たれたことでリンゴに甘みが出たということです」

3.「こういうリンゴが味わえるのは数十年に1度あるかないかの、実に珍しい、貴重なチャンスです」

4.「ヒョウに打たれた黒い痕がそのまま甘さの証拠なので、目で見てすぐにわかります」

 

こうしたプロセスを経て、「いける!」と思ったのでしょうね。

「満身の笑みを浮かべるジョージ君」の姿が、目に浮かぶようです。

このように、物の見方を少し変えるだけで、ピンチはチャンスに変わります。

 

ジョージのすばらしいところは、「知識」という情報を、上手くビジネスに活かしたことです。

A.「ヒョウに打たれたリンゴは、打たれたところから甘くなる」

→お客が知らなかったこの事実を伝えることで、好奇心が刺激されました。

B.「ヒョウに打たれる」というケースは、今後もあるかどうかわからない」

→「数十年」「珍しい」というフレーズが、お客に「味わえるのは今しかない」という気にさせました。

 

もっとすばらしいのは、ジョージにすばやい決断力と行動力があったことです。

想像ですが、「ヒョウに打たれたリンゴは甘い」は、

ある程度、他の農家も知っていたのではないでしょうか。でも、販売することはしませんでした。

多分、できなかったのです。

 

なぜなら、失敗すればお客に「金返せ」と怒鳴られ、ヒドイ目に合わされ、信用はガタ落ちです。

お客がわざわざお金を払って、「落ちたリンゴ」を買ったのは「普通より甘いから」に他ならないからで、

ジョージ以外の農家には、それだけの自信がなかったのです。

 

しかし、ジョージ自身にも、ぬぐいされない不安はあったはずです。

多分、商売をはじめる前に、いくつかのリンゴを試食して「甘い!」と思ったから、

ジョージは商売に踏み切ったのでしょう。

それでも、全てのリンゴを試食できない以上、リスクは依然として残ります。

後は覚悟を決めるしかありません。

それを決め、実行し、成果を出した。

だからこそ、ジョージの行動は讃えられる、と言えるのではないでしょうか。

 

(2014.5.19)

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