ヒットのヒント 「注目! 銭湯の『ユニークでスゴイ』生き残り策」

各地で梅雨入りのニュースが聞かれるようになり、暑さと湿気ジメジメの夏が

もう、目の前に迫ってきました。

(2014年6月にアップしています。後からご覧になった方、ごめんなさい。

梅雨どきの気分でお読みいただければ幸いです。)

 

こんなときはお風呂でサッパリした~い!

しかし、ほとんどの家庭に内風呂が普及した今、銭湯は徐々に衰退しています。

 

こうした中、神奈川県の銭湯業者と大塚製薬が、

今年の2月からとってもユニークなPRをはじめました。

 

さて、そのPRとは?(ヒントは「健康づくり」です)

 

今回も、1分だけ考えてみてください

 

 

銭湯

 

 

 

 

 

答えは、「銭湯を、ランナー向けの施設としてPRした」です。

 

具体的に見ていきましょう。まずは、このイベント内容をざっとご紹介します。

イベント名「銭湯ランナー応援キャンペーン」(以下、「銭湯ランナー」)

 

1.横浜・川崎市内を中心とした県内46施設(2014年6月現在)が対象

 

2.各銭湯の入口には「銭湯ランナー大歓迎」などと書かれたのぼりを立ててPR。

 

3.銭湯のロッカーやシャワールームをランニングステーションとして利用してもらう。

*費用は入浴料の450円のみ。他のスポーツ利用の場合でもOK

 

4.大塚製薬は銭湯近隣のマラソンコースマップを提供と

自社飲料「アミノバリュー」の販売を手がける。

*ちなみに、2の「銭湯ランナー大歓迎」のぼりは

「アミノバリュー」のイメージカラー・オレンジ色です

 

5.2014年2月1日より同年9月末まで、施設利用者対象に、

下記景品がもらえるスタンプラリーも開催。(先着200名)

*1施設利用で1個スタンプがもらえる。費用はこちらも入浴料450円のみ

スタンプ 3個:お風呂タオル

スタンプ 6個:スポーツタオル

スタンプ10個:ランニングTシャツかランニンググローブ

 

以上です。

いや~、スゴイなあ!

何がスゴイかって? では早速、私が感じた「スゴイ!」を、

もう少し細かく分析してみましょう。

 

まずは、プロフェッショナルなコラボがスゴイです。

私、この話は、「銭湯業界の単独イベントで、大塚製薬が協賛」だと思っていました。

しかし、関係サイトを巡ってみると、どうも違うようです。

 

このイベント自体は「神奈川ランナー王国」という団体が中心のようです。

(すみません。答えが多分わかると思ったので、問題文では載せませんでした)

HPによると、この団体は

「神奈川県のランニング事情を盛り上げるべく、施設やクラブ、企業が集まり発足した」

とのこと。

ランニングに関する情報発信、イベント企画などの活動をしています。

銭湯業界も大塚製薬も、その構成団体のようですね。

 

A:銭湯業界、B:大塚製薬、C:神奈川ランナー王国の3団体が

「各々の特長や得意分野を生かした」協力体制を作っています。

このイベントのアイデア自体、誰の発案なのかは分かりませんが

推測も交え、役割分担を読み解いてみようと思います。

 

A:銭湯業界:施設の提供、物品販売、マップなどの配布、参加者との接客を主に担当

 

→銭湯は、なんと言っても今回の「イベント会場」です。

参加者が実際に来る所なので、イベント全体の印象に大きく影響しますが、

各銭湯とも決してスタッフの数は多くないはず。

また、各銭湯の事情も同じとは言えません。

でも、上記内容を見る限り、銭湯側の負担は最小限にとどめられていると思います。

負担が少なければ、一般客のサービスもあまり損なわれない。

口で言うのは簡単ですが、さまざまなアイデアを検討されたのだと思います。

 

B:大塚製薬:スポンサーとして、資金、備品、景品、販売商品などの供給を担当

 

→「大塚製薬」は、あの「ポカリスエット」を日本に広めた会社です。

この会社は、PRの重要性を肌で知っています。

話がちょっとそれますが、「ポカリスエット」は発売当初、大変苦労しました。

スポーツ飲料というジャンルなど日本にない時代です。社内外で「まずい」と不評だったのです。

しかし、「スポーツなどで汗をかいた後は、この味と薄さがベスト」という調査結果をもとに

初年度に、3000万本もの無料サンプルを、スポーツチームや施設に、とにかく配りまくりました。

「今は商品を売ることよりも、商品コンセプトを伝えよう」と思ったからです。

結果、やはり少しづつスポーツ関係者の支持を得て、発売2年目の夏に爆発的に大ヒットしました。

だからPRの重要性には大変理解もあり、手もぬかないスポンサーなのです。

 

C:神奈川ランナー王国:総合プロデュースと技術アドバイザーを担当

 

→「町のランニングステーション」というフレーズがとてもわかりやすい。

「走る」ことはあらゆるスポーツの基本なので、対象人口も多いと思われます。

さらに、ランナーをサポートする環境づくりがスゴイ。

例えば「マップ」。さらっと「マラソンコースマップを提供」と書きましたが、

各銭湯ごとに各々5km/10km/15kmのコースマップを用意するので、

46施設×3箇所=138ものコースマップを策定しないといけません。

さらにルートの走りやすさ、交通量、安全性なども考えないといけません。

「神奈川ランナー王国」のメンバーは、指導者向けの技術指導が出来る

スキルをお持ちのようですから、このマップづくりひとつにも

かなり関わっているのでしょう。

イベントに「ノウハウ」といった本気度がつぎ込める団体です。

 

ざっとこんな感じではないでしょうか。

コラボは、ややもすると参画団体の利害関係なども絡むので

よいと分かっていても、実際にバランスよく運営するのは大変です。

ですから、単独で運営しようとして、うまくいかなかったりします。

このイベントは、その点、うまく支え合っていると思います。

 

 

さらに、「銭湯ランナー」には、”新しい銭湯の使い方” の

提案があるから、スゴイと思います。

 

「内風呂(シャワー含む)」はほとんどの家庭に普及しました。

生活するための入浴は、本来、これだけでも十分です。

また、そこそこの「スポーツジム」にも、シャワーやお風呂がありますし、

レジャー色の強い、「スーパー銭湯」も増えてきました。

今回はあまり取り上げませんが、燃料費の高騰もあり、

銭湯をとりまく経営環境は、ますます厳しくなっている、と言わざるを得ません。

 

でも、今回の「銭湯ランナー」キャンペーンは

「内風呂」「スポーツジム」「スーパー銭湯」以外の

ニーズを作り出しているような気がします。

 

「内風呂」「スポーツジム」「スーパー銭湯」は、基本的に「室内のみ」で完結していますが、

「銭湯ランナー」は、「ランニング=室外」と「入浴=室内」が組み合わさっています。

 

ランニングの楽しさの一つは、屋外を走る開放感と

景色の変化、季節の変化を五感で感じられる事でしょう。

さらに、トレーニングが続けられない理由の一つに「マンネリ化」がありますが

46施設138のコースを紹介されていると、

「すべてのコースを完走したい」と、多くのランナーが思うのではないでしょうか。

ですから、スタンプラリーが企画され、多くの施設を巡るほど景品も豪華になっていきます。

ラリーは期間限定、先着順ですが、各銭湯に新しい顧客を作り出して行くと思います。

これに対し「内風呂」は基本的に拠点は一つだけ、

スポーツジムも、チェーン展開していない限りは、利用できる拠点は一つです。

銭湯業界は、個々の施設を連携させ、さらに「季節」や「気象」といった

無限の変化を楽しめる「ランニングコースという室外」の要素を

セールスポイントに出来たのです。

 

また、「銭湯ランナー」は基本的に通常の入浴料でOKです。

ただ、これには「入浴料は都道府県ごとで一律に定められている」という

銭湯業界独自の問題もあります。

「銭湯ランナー」は値段が上げられない分、コラボの大塚製薬などの協力を得て

運営面での負担を極力抑えながらイベントのクオリティを維持し、

レジャー要素が多い「スーパー銭湯」や、会員制が殆どの「スポーツジム」より、

気軽に参加できるようにしたのです。

かといって、「スーパー銭湯」や「スポーツジム」を凌駕するものでもなく、

それらと「内風呂」との中間にある「新しい位置づけ」をしたのが

「スゴイ」と思った理由です。

 

我々は、ついつい顧客の都合に配慮しきれず、「従来とおりの手馴れたやり方」に

埋没しがちです。ましてや、「新しい使い方の提案」は、さらにむずかしいですよね。

しかし、今回の「銭湯ランナー」のように、

・新しい考え方を

・異業種と効果的に協力しながら

模索していくことが、やはり重要なのではないでしょうか。

(2014.6.13)

 

 

 

 

 

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